世界中が「愚」に陥ったVOL.96〈多くの日本人に読んで欲しい〉

ノーク出版からお知らせ
●駒場公園内の紅葉(2021.12.1)旧前田侯爵邸和館 日本近代文学館前の大きな銀杏の木
●紆余曲折を経て完成した新国立競技場だが、オリンピックは「無観客開催」。
海外の有名スタジアムと比べて明らかに見劣りする外観、機能不全の内装設備が続々と明らかに。1569億円かけて造ってこれなのかという指摘が相次いでいる。2021.12.2

●ウォーキングの途中で偶然に……。なかなかいい赴き。世田谷・代沢 森厳寺  2021.12.4

  (1)世界中が「愚」の連鎖
  あっという間に、世界が大きく狂ってしまった。世界中が「愚」の連鎖を引き起こしている。中共武漢由来のウイルス騒動をきっかけとして、世界が重層的二極分化となって、「地球人類全体愚」の道をまっしぐらに進んでいる。
  国連を初めとして、その下部機構WHO(世界保健機構)、国家・行政、IOC(国際オリンピック委員会)、ダボス会議、COP26、米国立のNIAID(アレルギー・感染症研究所)、FDA(米国食品医薬品局)、など世界に直接影響を与える連合体、政党、宗教、企業などあらゆる人間・組織が迷走している。しかもほとんどが言行不一致、Double Standardそのもので、「虚」を垂れ流して平然としている。その「虚」も、あらゆるプロパガンダ媒体を使って、上書きされ続けると人はそれを正しいものと信じてしまう。
  人間の智の深さはこの程度かと、長息しきりである。「環境保護」「公衆医療」など「科学」「人命」という名において(本当の科学、人権はそうではないので敢えてかぎ括弧にしている)ある種の目的で、巨大な資本を駆使し、長年にわたり計画的に情報操作された結果が今起こっている事である。あるいはこれから起ころうとしていることである。
  人は「憎しみ」「怒り」「焦り」「不安」「喜び」といった様々な感情を持っている。そしてその感情によって人の行動は簡単に変わる。恣意的に情報操作され、見えない恐怖に追い込まれると、人はその「焦り」や「不安」から早く逃れようと、ろくに考えもせずに、「これが解決策だ。これが特効薬だ。これがみんなを幸せにするものだ」という口車に安易に乗ってしまう。デマが横行し、どうでも良いことが針小棒大に喧伝され、一方通行の情報に侵され、遂には自分で考えることを止める。加えて目先の欲得が絡む。
  過去の人間の悲劇の歴史は全て同様なパターンで起こっている。言っておくが、「全て」だ。

  翻って、今の日本人には、確たる哲理に裏付けられた「危機識別能力」あるいは「敵・見方識別能力」が欠如してしまった。いわゆる「鍛えられた勘」が多くの日本人の中から失せようとしている。これは日本民族にとってとてつもなく恐ろしく怖いことなのだ。

(2)この劣化はいつ頃からか。
  顕著になったのは、戦後GHQに徹底して情報統制されて以来、敗戦利得者、日和見者、社会主義者・共産主義者達に、教育の根幹を握られ現在に至っているからだ。これら「検閲」のすさまじさは、日本人がそれを暴こうとすると、江藤淳氏のように徹底して叩かれる。
  日本人の論文記述よりも、外国人の記録がより客観性を持つ(と信じ込まされている)ので、例えばスウェーデン人のモニカ・ブラウさんの「検閲・禁じられた原爆報道」(時事通信社1988年発刊)に付された、一次資料、二次資料の膨大な目録記録などに限定しても、GHQの検閲は「焚書坑儒」さながらであった。
  だがその実態を明らかにすると、当時、火事場泥棒のようにして立場を得た学者、文化人、現在でもその系譜に繋がる弟子達が、自分の立場がまずくなるので、ほとんどがだんまりを決め込んで、今に至っている。
  戦後GHQの意向で、30万人の「公職追放」がおこなわれた。GHQの手先になって、自己の立場を有利にしようとする多くの学者・文化人がいた。これは涙が出るほど情けないことなのだが、これらを平気で行ったDouble Standardの進歩的文化人といわれ弟子達によって、今も言論、マスコミ界が操られている(著しく陳腐化し劣化したが)。それは法曹界にも及び、最高裁の判決も?と思えるものがある。具体的な学閥、人的系譜の詳細(人名)はここでは記述しないが、実体を知ればおぞましい徒弟制度に驚くに違いない。
  (3)反日的日本人とは
  谷沢永一氏の名著「悪魔の思想」~「進歩的文化人」という名の国賊12人~(クレスト社・平成8年刊)の冒頭にこうある。少し長いが引用する。
  「進歩的文化人のほとんどは反日的日本人です。そしてもちろん、彼等は共産主義またはその同調者、あるいは追従者です。では、それぞれの国にいるたくさんの共産主義者は、彼等を国家全体として罵倒し、国民を軽蔑し、歴史を遡って、古来以来、中世以来の祖国の歩みを、暗黒であった、罪悪であった、とひたすらに論じていたでしょうか。
  申すまでもありますまい。答えは全面的に、決定的に、否、です。
  私の知る限り、世界各国の共産党の重だった人びとは、例外なく愛国者です。もちろん彼らも共産主義者である以上、階級闘争の敵である資本家を憎みます。しかし祖国をまるごと憎むなんて、祖国の歴史をまるごと罵るなんて、そんな一国民としてあるまじき論法は用いませんでした。フランスのモーリス・トレーズも、イタリアのトリアッティも、祖国フランスを、祖国イタリアを、本心から愛していたように思われます。
  こうして見わたしてみたところ、世界の共産主義者は階級闘争の敵を憎みますけれど、祖国に対しては愛国者であるのが常例です。祖国への愛が強いからこそ共産主義者になったという例も、けっして珍しくはありません。
  したがって、日本だけが、本当に日本だけが、例外なのです。我が国の共産主義者だけが、祖国を憎み、祖国の歴史を悪しざまに罵り、国民に軽蔑の目を向け、反日的日本人になるのです。これはどうやら日本だけの特殊な現象なんですね。」
  (4)アメリカは二極分化し急激に崩壊していく
  このように谷沢永一氏が、上記の書籍で記述したのは、25年前の平成8年(1996年)であったが、今はどうだろう。
  アメリカを例に取れば、中共資本が時間をかけて、アメリカ分断と混乱を狙い、中央政界、官僚、議会、地方組織から、マスコミ、教育界と豊富な裏資金を投入し、極端な社会主義、共産化思想の浸透に半ば成功した。ここでは詳しく述べないが、一度敗退したマルクス主義・共産主義が見てくれの衣装を替えて復活してしまったのだ。
  アメリカの多くの大学は、授業料の高騰と政治的な「左傾化」によって嫌われ、学生の進学はこの6年で、260万人もの新入生が減少している。
  現在、ハーバード大学の教職員はリベラル一色だといわれる。(余談だが、11月22日のイギリスの大衆紙、ガーディアン(The Guardian)によると、「名門ハーバード大学の白人生徒の43%が“特別枠”で入学していた」という記事があった。私立なので金次第)
  研究費の援助、中国留学生などの増加によって極左思想に落ちた。
  実質的中共プロバガンダである「孔子学院」などを大学機関として認めてしまった多くの大学は、庇を貸して母屋を取られたのだ。
  アメリカが現在陥っている現象の多くは、遙か70年以上前に日本が、GHQ政策によって陥った事と相似している。しかしアメリカが社会的に深刻なのは、その国家成立の根底に、奴隷制度、強烈な人種差別があるからだ。アメリカの抱えた最も構造的な問題は、その労働力が、かつて奴隷制度によって成り立っていたからだ。
  そして25程年前から、中国共産党は中国人民から搾取した「Chinaマネー」をウォール街(アメリカ金融市場)に投資した。それによってウォール街は更にパワーアップされた。そのマネーは、民主党を中心にする急進的左翼、国家を否定するグローバリストに流れ、暴力的なBLM、アンティファ(彼等の方がよりファシストなのだが)などが主たる実行部隊となって、アメリカの都市のいくつかは機能不全になっている。
  これまでは中共とウォール街の関係は、「ウイン・ウインの関係」だった。只、あくまでもこれまではだ。この意味はおわかりだろう。ウォール街としてもこれ以上、ジェノサイド国家を強大にさせておく訳にはいかなくなったからだ。
  またバイデン政権の移民政策の失敗により、7月まで、過去20年間で最も多くの不法移民が国境を越え、その数は21万人に達した。
  バイデン氏は大統領就任初日の1月20日、トランプ前政権の複数の移民政策を撤廃。国境の壁建設を中止した他、国内の不法移民約1100万人に市民権獲得への道を開く法案を発表した。国家として破滅の道を選んだ。アメリカは急激に崩壊していくだろう。
  現在のアメリカ教育そのものが「反米的米国人」育成システムになってしまった。かつてGHQ以降の教育制度を上手く利用し、ソ連共産党「32年テーゼ」に操られて現在に至った日本共産党配下の日教組の思想に染まって、日本人としての尊厳を持てなくなったように、アメリカは、Chinaマネーとグローバリスト達の全体主義思想によって、かつての日本と酷似した道を歩もうとしている。しかしアメリカには未だ対抗勢力としてのマスコミも細々とある。健全なアメリカ国民も存在している。救いである。その主たる理由は、アメリカは世界有数の「宗教国家」であるからだ。
  実は、救われないのは日本、日本国民の現状だ。本来、仏教や神道、日本的儒教によって日本人の精神は整えられてきたが、それらは全て形式的な上っ面だけのものとなり、正しく考える「仕組みや物差し」が歪んでしまった。
  (5)日本の劣化が始まった事をもう少し詳しく見ていこう
  例えば、殆どの日本人は、半藤一利氏の著作「昭和史」(1926年12月25日から1989年1月7日まで・いわゆる昭和時代)に代表されるような切り口で歴史を見ているが、私は違うと思っている。
  歴史小説ならば「物語」として許されるが、「日本史」の登場人物を好き嫌いによって単純な善悪二元論に分類する歴史観は狭量であり、そこからこの先の日本を考える思考は生まれない。
  私は日露戦争(明治37年・1904年2月 から明治38年1905年9月)あたりから、日本人の脇の甘さが始まったように思っている。清末からの中国大陸の混沌とした覇権争いに限定しても、そこにはヨーロッパ、ロシア、アメリカ資本、その背後のユダヤ資本の流入と、漢人のしたたかさ、それ以外の多くの民族間の抗争(壮族、回族、満州族、ウイグル族、チベット族、モンゴル族など)が関わってくる。そこを押さえないと、上記半藤氏の「昭和史」のように、冷静に分析できなくなってしまうのではないか。
  今や、ヒトラー、スターリン以上におぞましい世界制覇を目指す反日国家中共。
  チベット・ウイグル、香港で行われている、暴行、大量拘束、拷問、殺人、臓器移植、奴隷など、人権や民主主義を徹底して破壊している。日本が、その中共の餌食になろうとしている。その危機的状況下で、役に立たない既成概念を捨て、意志決定の仕方そのものを変えなければならないのだ。これは容易なことではない。
  既存の意志決定プロセスの陥穽に填まってしまった「できあがった進歩的日本人」そしてそれらプロパガンダに慣らされてしまった日本人には大変難しい。現在の生活がそのまま孫子の代まで続くと思っている軽薄さ、お花畑思考を捨てなければならないのだ。
  全てを否定して新たな重層的な世界と関わる「日本史」を構築し直さなければならないからだ。事実この私がそうだった。全てを見直し、作家活動を始めるにあたり、あらゆる分野の資料を漁って頭の中を再構築するのに、この10年間激しい苦痛を伴った。
  (6)現実を知らない、鈍感なおバ〇さん
  例えば、満州に関わり、意見通らず排斥された石原莞爾も、ソ連・コミンテルン、ユダヤ資本、アメリカ政府の満州政策、そして孫文や蒋介石達の支那人達の思考回路・行動を完全に読めなかったし、スターリン、トロッキー、アメリカ大統領・ルーズベルトなどとの、重層的関係は当時掴めなかったに違いない。軍部内の人間関係も錯綜していた。情報将校を育てず、日露戦争以降、日本陸軍は、情報無視、情報音痴の軍隊となった。作戦参謀は情報部を「腐れ士官の捨てどころ」と侮蔑した。日露戦争の英雄の一人、児玉源太郎参謀総長が不都合な情報を嫌って、情報将校を排除した。過去の実績に酔ってしまった老害である。人は常に進取の意志を持ち続けなければ、その組織、ひいては国家に害をもたらす。
  毛沢東、蒋介石、汪兆銘、周恩来、張作霖・張学良などの寝返り、したたかさ、残虐さの歴史は、戦後全て封印されてしまった。彼等の行為は中共が喧伝する「南京大虐殺」の比ではない。昭和13年の夏、日本人300人が大虐殺された「通州事件」は日本史の中から完全に抹殺された。事件後数ヶ月後に現地取材に赴いた、作家の吉屋信子氏の「通州取材」は、哀悼と憤怒に満ちた壮絶な取材で、後世の私が読んでも血生臭さに胸を打たれる。
  今なら日露戦争を経て、第一次世界大戦、大東亜戦争、マッカーサー支配下の極東裁判など、戦後76年に至るまでを冷静に俯瞰できる資料が解禁され、体系的に研究される資料は整った。しかしそれを体系的に纏められる研究者がいない。
  このように「満州」に限定しても、錯綜した重層的な「世界」視野で、日本の歴史を、冷静に解き明かす歴史家が、今この時代に必要なのだ。
  鄧小平の死後、江沢民や胡錦濤一派と習近平の権力闘争がいかに熾烈で、彼等は何を考えどう行動するのかを予測でき、我々日本人の目を覚ましてくれる歴史家が必要なのだ。 そういう抹殺されてしまった歴史から、正しく世論を形成し、日本の意識を変えなければ、覇権国家中共とグローバリスト達に食いものにされ、日本は滅亡する。
  そういうと、鼻でせせら笑い、「そんな大袈裟な」と言うだろう。しかしそういう方々は、本当の現実を知らないおバ〇さんだ。
  (7)未だに日本は完全な独立国とはとても言えない
  戦後日本を体たらくにした元凶は、GHQの闇物資で利を得た戦争利得者や、日本軍の隠匿した軍事物資の横流しで儲けた人間や、二枚舌の社会主義者や共産主義者達だが、GHQにすり寄って、戦後官僚を徹底して甘やかした吉田茂の罪もまた大きい。
  今に至るも、日本の外務官僚の上から目線、財務・通産官僚達の思考回路は、吉田の奉天時代の傲岸無礼なエピソードを知れば頷ける。
  奉天総領事になったときのことだ。本国の伝達を無視し、張作霖を卑下した。
  あるとき張作霖が吉田を歓待して豪華な食事に誘った。張作霖は毒が入っていないことを証明するため、小皿に料理を取って自分が箸を付けてから吉田に差し出した。しかし張作霖を下品と小馬鹿にし、一口も口をつけなかった。日本国を代表して食事に招待されている以上、吉田の行為は外交官として許されるものではなく、実に狭量である。一総領事の傲慢な態度は、支那状況を悪化させてしまった。
  馬賊を馬鹿にしたその感情の裏返しが、マッカーサーに対する態度である。息のかかった者達によって美化された物語は、後の日米交渉、記録文書から簡単に粉砕できる。
  時代をしっかり検証すれば、当時の誤謬が明らかになる。しかし、私はそれをもって歴史の人物を糾弾することはしない。寧ろ問題なのは、戦後今に至るまで、何故きちっと原因と分析を検証してこなかったのかというのが問題だ。その検証の中、中共やアメリカの覇権主義に翻弄されない、「大事な大事な思考プロセスの本質」が隠されている。それを探るのが歴史家だ。
  もう一つ、吉田に関わる事を挙げておこう。戦後になってから本格的に政治のキャリアをスタートさせた吉田にとって、昭和天皇の圧倒的な情報量は頼りになるものであった。初代宮内庁長官の田島道治氏が昭和天皇との対話を記録した「拝謁記」がある。立場上昭和天皇は意見が言えないが、吉田氏は昭和天皇に内奏し、内閣人事や朝鮮戦争などについて情報を上げていた。昭和天皇は日本が独立を回復した直後の昭和27年(1952年)5月8日の拝謁では、「私は再軍備によつて旧軍閥式の再抬頭は絶対にいやだが去りとて侵略を受ける脅威がある以上防衛的の新軍備なしといふ訳にはいかぬと思ふ」と語ったと記されている。
  「拝謁記」には昭和天皇がこうした再軍備や憲法改正についての考えを、当時の吉田茂総理大臣に直接伝えようとして、田島長官がいさめる様子が記されている。その時から70年後の今、苦渋の国難を経験された昭和天皇の現実政治への慧眼が際立つ逸話である。
  「世界的な権力抗争」という認識で歴史を探っていくと、列強諸国は、どのような考えを持ち覇権を狙っていたかわかる。
  歴史は表と裏、裏の裏まで、精査することが必要で、例えば、岸伸介が、その政治使命をかけて日米安全保障条約の改定をなしたが、同時にその裏でマッカーサー統治の「日米行政協定」から「日米地位協定」が1960年1月に発行された。「日米地位協定」は、安保改定はあっても、今に至るまで一度も改定はない。この協定は、在日米軍の基地使用、行動範囲、米軍関係者の権利などを保障したもので、沖縄の悲劇はここに在る。米軍への「思いやり予算」は下方硬直的に増加するが、我々国民にはその実態は知らされていない。それがこの協定である。
  冷戦後、敗戦国のドイツ、イタリアは、NATOに参加したため、同様のアメリカとの地位協定は改定されたが、日本はそのまま。「日米地位協定」に関する、日米の関係者のみの秘密会議で決められ運営非公開である。未だに日本は完全な独立国とはとても言えない。
  (8)「知力があっても知性が無い」インテリ
  これまで自民党政権は、国民にきちっと向き合って国家運営をしていたのか甚だ疑問である。その自民党の腐敗に怒った国民は、平成(2009年)8月末の衆院選で民主党が勝利し、政権交代を果たした。ところが、3年余りの政権運営は更に最悪、迷走の連続で、全て官僚に任せっきりのため、財務、通産などの官僚が更なる力を持つことになった。彼等高級官僚やその出身の政治家は、「知力があっても知性が無い」これでは、錯綜した国際社会の舵取りは出来ない。当然、世界情勢に対処できる想像力や知謀もない。
  その後政権が自民党に戻っても、実質賃金が20年間に亘って低下し続けている。日本国民は世界最悪の経済環境となって久しい。真面目に働いても賃金は上がらない。
  安倍晋三政権の経済政策の失敗だ。結局やったことは「実質賃金減」であり「個人消費減」である。税金泥棒の権益を増やすために財政出動して国家財政に穴をあけ、そのつけを国民の預金を奪う金融緩和と消費税増税で補填しただけである。
  平成24年(2012年)衆院選の政権公約にしていた「TPPに反対」を反故にし、政権が発足すると手のひらを返し強力推進した。TPPは「自由貿易」とは名ばかりで、実態は外資に日本経済を売り飛ばし一部の特権階級や富裕層が庶民から搾取するためのものだ。
  日銀の金融緩和は外人(グローバル外資ファンド)に日本人の金を渡しているだけなのだ。
  日本の高級官僚は、意図的に日本を矮小国家にしたいようだ。
  その責任は、全て彼等にある。グローバリズムの弊害を考慮する弾力的な政策出動が出来なかったのだ。
  「サルでも判る愚策」な金融・財政政策は止めて欲しいが、IMF(国際通貨基金)の忠実なる僕(しもべ)である日本の財務・日銀の高等役人達には、闊達な知性に基づいた日本発の、財政金融政策を期待するのは無理のようだ。何とも腹立たしい。
  これらの既得権を70年以上に亘り拡大死守してきた天下り利権構造は、一人や二人ではとても解体する事など出来ない。
  それに財務省・日銀の代々指導者は、これら国際金融資本家達の流れに乗っているだけだ。流れに棹させば、忽ち解体させられ、利権も消滅し、場合によっては命も危ない。
  これまでの日本の政権が長持ちしたのは、ひとえに国際金融資本家達の利益に貢献する政権であったに過ぎない。中曽根政権も、小泉政権も、安倍政権もこの「事実」を知ってしまうと忽ち変節する。マスコミに顔を出す日本の政治経済評論家の誰一人としてここを取り上げなかった。唯一それに近い事を仰った保守の重鎮論客は西尾幹二氏(「保守の真贋」保守の立場から安倍政権を批判する・徳間書店)、渡部昇一氏、そして経済・社会学からは、三橋貴明氏、科学者の苫米地英人氏ぐらいだろう。
  世界をグローバル化(そう言うと言葉は良いが、要は「銭で世界を操ろうとする集団」)しようとする集団の意向を損ねると、企業活動も出来なくなる。
  それを上手く日本に誘導して、美味い汁を吸っている売国奴がいる。日本人の税金をかすめ取っている。これらの輩は、グローバル金融資本家のいわば「パシリ」(使い走り)でしかない。教壇から政府に潜り込み、その後企業の役員となって利益誘導しているが、恥ずべき事だと自覚しないのだろうか。いずれにしても「パシリ」の役を果たすと、切り捨てられる運命である。尤も、管前首相も、岸田現首相もこれら「パシリ」に忖度しているが、何と無定見で未熟なことか。
  ちなみに、アメリカの実質権力を持つのは大統領とそのスタッフではない。グローバル金融資本家達と深く繋がっているデープスティトといわれる高級官僚達である。民主党のオバマ大統領が、就任最初に手を付けたのは、自分の息のかかった高級官僚を大量スカウトし、雇用した。オバマやヒラリー・クリントンやバイデン大統領の都合の悪い情報はここで堰き止められている。それは今でも続いている。
  オバマ民主党政策を変えようとしたトランプ大統領に徹底して抵抗したのは、この勢力である。日本の官僚達が対アメリカ政策で、第一に目を配るのは、これら実権を持つデープスティトと言われる集団である。当初から彼等の顔色を窺う日本の高級官僚は、日本国民の公僕として忠誠を誓うスタンスは端からない。亡国の基本パターンである。
  これについては、執筆中のDouble Standard(日本崩壊)で、このような枝葉の話ではなく、幹の「私的政治・経済理論」で論述する。「新自由主義経済」などの言葉も、曖昧な定義のまま使っている日本の学者先生方に一矢報いないと、私の赤心が国民に伝わらない。
  腹立たしさのもう一つは日本人の存続に関わる防衛・国防問題である。それも喫緊な要件である。日本の難しさは、先の金融グローバリストと、中共の脅威の両方に向き合わなければならないのだ。実に難しい。これをコントロールする日本人はいないだろう。現在執筆中の幕末歴史小説「初音の裏殿」は、幕末の日本の激動期を舞台に、天才主人公宇良守金吾に、欧米・支那思想の更に上を行く戦略思想を持たせ、我が思いを仮託させ大活躍させている。「究極の幕末歴史小説」だと自負する思想背景はそういうことだ。
  (9)狂気の中共パワー
  隣国の反日国家中共が遂に、牙をむき始めた。新疆ウイグル地区の実態を見よ。中国の正式な国家統計である「中国統計年鑑」において、新疆ウイグル自治区における少数民族人口が、この2年間で164万人も激減した。その状況は現在、世界中の人々がHPから閲覧できる。ナチスのユダヤ人虐殺以上におぞましい。しかし「そんなこと、中共がするはずないだろう」と、脳天気な日本人が殆どだ。
  中共は2010年に国防動員法、2015年には国家安全法が施行され、2017年には国家情報法およびサイバー・セキュリティー法、そして2021年には、改正国防法と海警法が施行された。ヒトラーがやろうとした何十倍も危ないことを本気でやっている。
  11月に、岸田文雄総理、林芳正外務大臣、茂木敏充が自民党幹事長に就任したが、この方々の対中弱腰政策では日本国を加速度的に弱体化させてしまう。米中二股外交と、重層的対応とは全く別物だ。残念ながら彼等をコントロールする官僚も含めてその能力はない。
  尤も、媚中、媚韓の河野太郎や二階俊博をはじめ自民党の二世、三世議員、中共のマネートラップ、ハニートラップに陥った、おそらく8割以上が、親中・親韓(媚中・媚韓)議員だ。公明党(創価学会)、日本維新、立憲民主の面々は言うに及ばず。
  本気で中共は日本を狙っているのだ。今後も協調して協力関係を維持したいなどと言う、目先利益の腰砕け外交では、この先永劫に完全にイニシアティブを失ってしまう。今が、タイムリミットなのだ。議員先生方の脳味噌の中を覗いてみたい!!
  大企業をはじめとする財界も然りである。中国・香港とやり取りした私の乏しい経験から言っても40年前の中国と、この10年来の中国の動きとは全く違うと肌で感ずる。
  10年もタームがあれば企業経営者として、リスクヘッジに自由分な時間であった。中国に代わるサプライチェーンの構築など、次善策はいくらでも構築できたはずだ。
  「危機識別能力」あるいは「敵・見方識別能力」の欠如だ。
  当時の天安門事件の香港の様子を知りたければ、拙著「永別了香港」(AmazonKindle・全五巻)を読むべし。
  (10)中半端な認識と、媚中・媚韓が亡国へ
  保阪正康氏の本は何冊も読ませて頂いたが、その氏が読書人の雑誌「本」2015年8月号(私が読んだのはブログ版)に投稿された実に残念な記事を発見した。部分を紹介する。
  「私は今回、『安倍首相の「歴史観」を問う』という本を書きました。自分としては異例のアクティブな内容で、時代状況論や政権批判にかなり踏み込みました。いままでは本書で明らかにしたような物言いを避けてきたところがあります。(中略)
  この本は私にとって、現代史研究者のやむにやまれぬ発言なんです。日本は戦後70年、戦争とは縁を切ってきた。そうして築き上げてきた戦後民主主義という建物を、いま安倍首相は次々と壊している。それに対して、私はいったい何のためにいままで昭和史を研究してきたのか、と自らを問い直さざるを得なくなった。根本にあるのはその思いです。
  私は先人の経験を引き継ぎ、教訓を学び、それを未来に手渡すために昭和史に取り組んできたのであって、好事家として歴史を研究してきたわけではない。戦後民主主義の価値が崩れ落ちるのを黙って見すごしていたのでは、歴史を学んできた自分の拠り所さえも破壊されてしまう。その思いを汲み取りながら本書を読んでもらえたら、と切に思います。
  本来「戦後レジームからの脱却」は、安倍首相のように大日本帝国への回帰ではなく、非軍事憲法を真の平和憲法にする努力でもあり得たはずです。しかし左翼自体が保守化してしまったため、戦争と平和をめぐって何を変革すべきかという重要な論点が見えなくなってしまったと思います」
  残念ながら、保坂氏の「歴史観」では、台湾、沖縄、そして日本本土も易々と、中共に蹂躙されてしまう。かつて、ナチス・ドイツに対して、イギリス首相チェンバレンの宥和政策(実は何もしない軟弱外交)により、ヒトラーによってスデーデンランドを易々と割譲されてしまったように、日本は完全に日本でなくなってしまう。
  「平和憲法」も「民主主義」も、吹き荒れるグレートリセットに名を借りた、世界の全体主義化、中共の謀略、ロシアの狡猾外交、反日国北朝鮮・韓国の動静、アメリカの独善主義という複層する日本が置かれた環境を理解していない。執筆から6年経った今、保坂氏の視点で歴史を見つづけていたら、30年後に日本は消滅しているだろう。
  戦後76年、日本の多くのマスコミの中に浸透してしまった媚中・媚韓の反日思想を持つ人間が今や幹部として番組や記事を検閲している。創価学会・公明党に代表される親中組織も、与党として国力を削ぐようなことばかりしている。
  創価学会が中共での布教を夢見て、対中共すり寄りをし続ければ、日本中の土地が買い漁られる。考えても見よ、中共が、創価学会の布教を許すはずが無いではないか。法輪功の信者の大弾圧を知らないのか。
  日蓮聖人が嘆いておられる。立正安国論の「他国侵逼難」の本質をどうねじ曲げ、「法華経」をどう解釈したらそうなるのだ。法華経やその信奉僧、日蓮聖人を冒涜している。
  創価大学の創立以来、今や創価大学は、日本における中国のスパイ養成所となっている。このような創価学会と公明党には日本の政治を1ミリたりとも任せるわけにはいかない。
  選挙でまともな国会議員に投票しようとしても、最悪な小選挙区制度で、二世、三世のろくでもない議員達が世襲し、活躍して貰いたいという候補者がいない。自民党公認・公明推薦では、もともと公約が違うのだから「投票」のしようがない。これは憲法違反ではないのか。憲法改正以前の問題だ。
  全立候補議員の媚中・媚韓度を、客観的に計測する様なシステムは出来ないものか。
  (11)世界の支配構造
  今、日本中のマスメディア情報は、勝手な基準でふるいにかけられ、恣意的に黙視されたり、時には真逆の改竄、数値変更などお手のものだ。視聴料や購読料をわざわざ支払って、歪曲情報を掴まされていることに、もっと危機感を持たなければならない。そうでないと頭書に記載した愚民に陥ったまま、そこから抜け出せなくなってしまう。
  憲法改正以前に、現在の「新聞法」「放送法」を改正するのが先で、日本の国力維持のために遙かに役立つ。今まで甘い汁を吸ってきた彼等にとって、この改正は既得権益の利権の橋頭堡だから、「報道の自由」と称して掲げて徹底抗戦するだろうが、これらメディアを優遇する法律が我々国民の「自由な知る権利」を奪っていると気づくべきなのだ。
  ところで、テレビ・新聞などに日々掲載される情報はどのようにして入ってくるのか。
  世界通信社World News Agencyとよばれているものに、「ロイター(イギリス)」、「AFP」(フランス)、「UPI」「AP」(アメリカ)の4大通信社とロシアの「イタル・タス」、それに中国の「新華社」がある。
  全世界のニュースを収集して、数多くの言語で世界各国に配布するシステムである。
  その西側の4大通信社はすべてユダヤ系の経営であり、コンピュータによる市場運営を牛耳っている「ロイター」の経営陣はロスチャイルド一族だ。そして、「AP」はロイターがアメリカでおこした通信社である。
  これらの通信社や中国の「新華社」を含めて、共同通信社や時事通信社はその情報を買って、日本の各マスコミに配信している。それら日本の2つの通信社が電通の大株主であり、その電通を通して日本のメディア支配もある。
  ロスチャイルド一族が共同経営するメディアは、テレビではBBC、CBS、NBCなど、新聞では「ファイナンシャル・タイムス」「ニューヨーク・タイムス」「ワシントン・ポスト」など、雑誌では「ニューズウイーク」「エコノミスト」などなど、数え上げればきりがない。
  食糧、エネルギー、金融、そして、メディアを支配しているユダヤ資本は、マスコミ操作、大統領選挙をも意のままに出来るという構造になっている。
  それらの世界の支配構造が、一定の良識・調和のもとに動いている内は気がつかないが、パンデミック化によって「全体主義的」な計略が忽ちあぶり出された。
  我々は、それに対抗するために、全体を俯瞰する独自の情報収集力と分析力としたたかなパワーを持たないと簡単に分断されてしまう。何しろ「欲望の資本主義」のパワーは絶大だ。全世界で真の民主主義、真のナショナリスト、反グローバル化のために、冷静な全世界的世論を形成し、戦いをしなければならない。
  (12)新たな全体主義
  グローバリスト達の支配構造に大きな変化が起きている。「欲望の強すぎる」ビックテックの新興成金や、番頭達が勝手をやり出した。そして長く牙を研ぎ、時期を待っていた中共も俄に牙を剥き始めた。
  彼等は道徳なき独裁を目指している。このまま進むと、人間の一人一人の生態情報にまで入り込み、完全にコントロールされた「奴隷的自由」しか享受する事が出来なくなる。
  もはやその時には、国家という概念も、民主主義、全体主義などどいう従来概念でなく、全人類の命まで管理される全体主義へと変貌してしまう。何を馬鹿な絵空事をというかも知れないがこのままではこうなる。
  グローバリスト達に煽られて「グレートリセット」「脱炭素」などと浮き足立っているが、冷静に考えてみて欲しい。遺伝子ワクチン接種失敗のツケをどうするか、欲得にまみれた過激な地球温暖化対策、脱炭素なども実現不能と早晩明らかになる。その失敗が明らかになる前に、徹底的に隠蔽に走るはずだ。邪悪な手の平返しという奴だ。過去の人間の負の歴史を顧みると必ずそうなっている。国家規模の隠蔽は、地球規模、人類規模の隠蔽となって、その先は考えたくもない闇となる。
  世界経済フォーラム(毎年一回)開催する、その創設者・会長 クラウス・シュワブ教授(ヘンリー・キッシンジャーの教え子)はこんなことを言っている。
  「バンデミックは、私たちの世界を振りかえり、再構築、リセットするための、稀にしかない機会である」「私たちは決して、昔の普通の状態には戻れない」
  とんでもない独善だ。現在行われている、強制的ワクチン接種、デジタルIDカード化、など、世界のごく一部の狂ったエリートたちが計画的に実施しているとしたら……。
  これら数%の狂ったエリート達に、その他90数バーセントの地球人類は、私有財産も剥奪され、檻の中に閉じ込められ、更には、生命の預託まで管理されてしまう。自由で創造的な思考が出来なくなるのだ。彼等の主張する「グレートリセット」の最終目標は、なんと私有財産の全面廃止だ。ダボス会議は、「何も所有していなくても幸せ」な世界の構築を、2030年までに目指すと、公式に掲げている。いい加減にしろよ。
  (13)「墨子(ぼくし)」に見習え
  「欲望の資本主義」をコントロールしてきた方々よ。あなた方のその力はこの先も必要だが、それは従来の閉鎖型の独善性を放棄し、透明性を持ち、世界中が情報共有できるような新しい「グローバル連帯」という、集団的リーダーシップの場が必要なのだ。
  まさに世界フォーラム、ダボス会議などはその真逆を行く行為だ。グレートリセットしなければならないのは寧ろあなた方の思い上がった思考なのだ。
  しかし、新しい善のビジョンを構築するにも、グローバル金融資本家達の力は侮れない。 彼等にとって自己撞着的行動だが、人類破滅とは真逆な「アナログ革命の創出者」に生まれ変わって貰いたい。それこそが「愚」に落ちてしまったこの状況から脱出する唯一の解決策で、それがあなた方の贖罪を償う道筋だ。そのような人材が独りでもいて欲しい。
  もはや完全に中共に汚染されてしまった国連や、「世界の軍隊」を標榜していたアメリカのパワーもうせた。世界中に「人民元」という空手形を振りまき新興国を経済的に隷属化したインモラルな中共は人類を滅亡に導くだろう。
  これらを修正し、地球人類を救うためには、冷静に事物を洞察でき、しかも現実的な権力と資金力を持った哲学者が必要だ。善の哲理とパワーを持った無私な人物が現れて欲しい。グローバル資本家の中に、欲得を離れた、地球の将来を踏まえた、真の英明者、賢者が欲しい。
  さて、話は日本に戻る。脳天気の媚中議員や知事、はたまた手っ取り早く資金にしたいという愚民達の軽率によって、北海道、京都、大阪、静岡、東京、千葉など中国資本によって、土地が買い漁られているが、その土地が、中共の日本侵略の基地となってしまう。中共の凶暴性、飽くなき覇権主義を考えれば、今すぐ、サプライチェーンを分断しない限り、日本が日本でなくなる。目先の経済利益の喪失に目が眩んで躊躇しているときではないのだ。まさに「危機識別能力」の欠如だ。ユニクロさん、無印良品さん中国企業になった方が良いようだ。
  今やグローバル金融資本家達は、厄介者となった中共の扱いをどうしようと考えあぐねているはずだ。中共マネーによって形骸化した国連をどう上手に排斥したらいいかと考えているはずだ。熾烈な綱引きが水面下で行われている。結果的には、現在のような中共の強引な政策は敗れるだろう。しかし、その破れかぶれになった時の中共が一番危ない。
  日本は何としても耐えなければならない。それも今すぐにだ。
  それこそ中国の戦国時代に出現した、諸子百家「墨子(ぼくし)」に見習え。平和主義・博愛主義でありながら、非戦のための築城術・迎敵の法など当時として最強の軍事兵器「雲(うん)梯(てい)」「衝車(しょうしゃ)」などを作り上げた。墨家は頼まれれば、どんな都邑の城郭の防御のためにも傭兵的集団として出向き、その戦術は微に入り細に及び、敵の攻撃を想定し、それらの多様な作戦に対応できるだけの軍事訓練と軍事機器の開発を怠らなかった。今の日本、日本存続に求められるのはこの思想と実践である。
  日本国民の酷税や安全を泥棒猫のように掠め取る役に立たない「パシリ」を徹底排除し、直接グローバル金融資本とのホットラインも必要だ。不戦のための軍事費も必要だ。墨家軍団のような戦略戦術に長けた天才的人材が、日本にもいればいいのだが……。
  捲土重来を目指しながら、100年レンジで今から具体的青図を描かなければならない。返す返すもあまりに脳天気で、これまで世界の重層構造を理解しなかった私を含めて、慚愧に堪えない。我が子孫に恥ずかしい思いでこの文章を書いている。
  現在第一巻を上梓した、読み切り幕末時代小説「初音の裏殿」シリーズはまさにこのような思想背景で描かれている。是非お読み頂きたい。楽しいスリルと娯楽に満ちた幕末歴史小説だが、従来の幕末歴史小説ではない。この物語は最初から「世界認識」「重層的経済活動」「情報戦略」という大きな柱を埋め込んで執筆している。
  (14)絶望の淵から愛と希望を!!
  最後に、万葉歌でVOL96を閉じたい。通常の現代訳のあと、私の独自の解釈で我が意を伝えたい。
  天平五年(733年)癸(き)酉(ゆう)、遣唐使の船の難波を発ちて海に入る時、親母の子に贈る歌
  旅人の宿りせむ野に、霜降らば、我が子、羽ぐくめ天の鶴群(たづむら)
  意味: 旅をする人が野宿する野に霜がおりたら、私の息子をその羽で守ってあげて、空を飛ぶ鶴たちよ。
  遣唐使の一員に選ばれた若者の母が、難波の港を出航しようとするその時にこの歌を詠んで子に贈った。母はただ我が子の無事を祈るのが精一杯であった。
  遣唐使となる事は国のエリートとして名誉なことだが、同時に大変な危険を伴う。無事に唐へ到着し、その地で勉学しても、運にも恵まれないと故郷の土を踏めない。
  一方の若い遣唐使は自己の野心を膨らませて唐に向かう。当時日本人にとって唐は、世界の中心、世界そのものであった。
  しかし、その理想とする世界は、実はそんなに甘くない世界であった。だが、殆どの日本人は「唐=世界」の表層しか見て帰ってこなかった。中国社会の覇権主義、権威主義、宦官や19世紀にクーリーといわれた中国人の奴隷制度の裏を見る事が出来なかった。
  だがその「世界」の成り立ちを、しっかりと見た人物がいる。弘法大師空海である。
  空海は、遣唐僧として、貞元20年(804年)8月10日、福州長渓県赤岸鎮に漂着したあと、たった2年の在唐期間で、唐=世界を支配する権力構造の闇まで見通した。
  都長安は世界各地から商人や使節が集まり、国際的な繁栄がもたらされ、長城内には中国固有の道教寺院(道観)だけでなく、外来の仏教寺院、ゾロアスター教(祆教)、マニ教(摩尼教)、イスラーム教(回教、清真教)、ネストリウス派キリスト教(景教)の施設が建てられ、世界の文化が集まって繁栄していた。空海はその繁栄のカラクリの裏と闇を熟知し、これらを超える世界を包含する日本発の真言密教の世界を作り上げた。
  闇と光を際立たせ、そこから仏教を大きく飛翔させ、希望の祈りを構築した。天才の天才たる所以である。
  さて、上述の歌が詠まれたのは、天平5年(733年)の第十次遣唐使と判っている。この時の遣唐使船は、第3船が難破してベトナムに漂着し4年後に日本に帰り着く。第4船は難破して行方不明となった。この歌の「我が子」が、どの船に乗船したか、藻屑となってしまったか、しっかり勉学して帰国したかは判らない。だが私は、この青年は20年後に無事帰国し、母と面会し日本のために活躍したであろうと堅く信じている。
  深い母の愛情に包まれた人間はきっと、我が日本国のために命をかけて戦ってくれたと思っている。
  日本中の皆様の頭中の闇を払い、その未来に光あれ!!
                   令和3年12月7日(大雪)
春吉省吾
(文中の人物は敬称略です。ご了承ください)

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令和5年1月現在、全日本弓連連盟・錬士六段、全日本剣道連盟居合・錬士六段。40歳を過ぎて始めた「武道」です。常に体軸がぶれないように、手の内の冴えを求めて研鑽は続きます。思い通り行かず、時に挫けそうになりますが、そこで培う探究心は、物書きにも大いに役立っています。春吉省吾

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