AI……、監視社会の深淵と、守るべき最後の砦

ノーク出版からお知らせ

便利さの裏側に潜む「違和感」の正体

 私たちは今、歴史的な転換点の真っ只中に立っている。
GeminiやNotebookLMといった最新のAIツールを日常に招き入れ、その圧倒的な処理能力に驚嘆する一方で、拭いきれない「漠然とした不安」が澱のように溜まってはいないだろうか。
 私も最近、自らの思索を整理するためにAIとの試行錯誤を始めた。
 まずは無料でその限界を見極める。
 そんな軽いチャレンジのつもりだったが、そこで直面したのは、AIは単なるツールの進化を超え、社会構造そのものを変容させかねないという、穏な予兆だった。
 AIは私たちの能力を拡張する頼もしいパートナーなのか、それとも人間を管理し、その魂を抜き去る「飼い主」へと変貌を遂げようとしているのか。
 便利さという甘美なオブラートに包まれた、AI社会の本質を解剖してみたい。

「一人企業」をエリート集団に変える、Claudeの衝撃

 個人の能力をどこまで拡張できるかという問いに対し、現在最も鮮烈な回答を示しているのがAnthropic社の「Claude」だ。
 同社は次世代基盤モデル「Claude-Next」の開発に向け、今後2年間で50億ドルの調達を計画しているという。この新モデルは、現時点での最高峰モデルの10倍という、想像を絶する能力を持つとされる。
 Amazon(AWS)が最大40億ドル、Googleが20億ドルという巨額の出資を決めた背景には、この技術が世界のパワーバランスを塗り替えるという確信がある。またAmazonとGoogleかと長息してしまう……。
 私のような「一人企業」であっても、Claudeを縦横に使いこなせれば、それは数人分の優秀な社員を雇うのと同義だ。しかし、この恩恵に浴するには、一つの厳しい警告を忘れてはならない。Claudeの真価を引き出す「ClaudeCode」を導入するなら、PC内のセキュリティを万全にしておかなければ致命的なリスクを招くという点だ。
 近々最低金額、月額200ドルのコストを払い、この超高性能な知性を経営戦略にどう組み込むか試して見たい。
 AI技術は使う側の能力が問われているということになる。
 強力な「武器」を手にしたとき、真に試されるのはそれを扱う人間側の知性と、何を実現しようとするのかという「戦略」の深さなのだ。

「Claude Mythos」(クロードミトス)

 しかし、実際はそんなレベルではなかった。Anthropic社が開発したばかりの「Claude Mythos」(クロードミトス)が恐ろしい。あまりに凄いので、Anthropic社は、悪用された場合、経済や人々の安全、国家安全保障にも新たなリスクをもたらす事から、その脅威を懸念し、プレビュー版をAmzonやMicrosoft、Apple、Googleなどの、巨額の出資をしたテック大手に限定して提供を開始した。
 Mythosは、悪用されれば、ランサムウェアなどのサイバー攻撃に利用される危険性も指摘されている。
余談だが、026年1月3日未明アメリカ軍が、ベネズエラのマドゥロ独裁政権に対し、電撃的な軍事作戦により首都カラカスが急襲され、マドゥロ大統領夫妻を拘束したその作戦も「Claude Mythos」の利用によるとされ、イランへの軍事作戦もこの「恐ろしく賢いAI」が利用されているという。
 このAI技術は、世界のパワーバランスを塗り替えるだろう。
 そして巨大IT企業の限定利用によって、これらを監視・制約する対抗勢力が見当たらない。
 更に、5月20日、急拡大するAnthropic社の顧客データ管理のため、イーロンマスク率いるSpaceXが手にするデータセンターから計算能力の供給を受けるという。2029年5月までに、毎月12億5,000万ドル(約1,900億円)を支払うことで合意した。

アメリカ巨大AI企業の牙城は揺るがない。長息するばかりだ……。

中国の「鼠人(ネズミ人間)」AI監視社会が生んだ絶望の静かな抵抗

  さて話を戻そう。AIがもたらすのは、個人の拡張という光の側面だけではない。
 ソースが突きつける最も衝撃的な影は、中国における「鼠人(老鼠人)」という現象である。
 中国の都市部における若年層(16〜24歳)の失業率は、2026年3月時点で16%を超え、大学を卒業しても約半数が職に就けないという凄惨な状況にある。〈写真はEPOCHtimeより〉
 AIを駆使した徹底的な個人認証、スマホ決済を通じた行動監視、交通違反の自動取り締まり……。
 逃げ場のない統治システムの中で、競争に敗れ、あるいは競争そのものを放棄した若者たちは、都市の片隅で「ネズミ」のように息を潜め、最小限のエネルギーで生存を図っている。
 これは、自発的に社会を離れる日本の「引きこもり」現象とは本質的に異なる。
 構造的な圧力によって欲望を強制的に剥ぎ取られ、「頑張っても報われない」という無力感が社会全体を覆った末の悲劇だ。AIが独裁の道具と化したとき、それは絶望を固定化する装置となる。
 共産党の一党独裁から自由を叫び、国家軍とぶつかった「天安門事件」のような事にはならず、「ぬめ~っ」とした鼠人間の絶望的抵抗に、共産党独裁国家は手を焼くことだろう。
AIによって完璧に管理された社会で、人々は出口のない「静かな絶望」を選択せざるを得なくなる。これはAIを社会統治として厳しくすればするほど、社会・国家そのものが、無気力になってしまうという大きなジレンマである。
 独裁国家に限らず、国家を越えたAIシステムを構築しようとしているGAFAM(Google、Apple、Meta、Amazon、Microsoft)それに加えて、イーロン・マスクの「SpaceXAI」の目指すところは同じ方向を向いている。

逃げ場なきデジタル包囲網:マイナンバーとGAFAMの真実

 「プライバシー」という言葉は、今や空洞化した幻想に過ぎない。
 日本のデジタル庁が管理するマイナンバー制度のサーバーが、実はAmazonの提供するAWS(Amazon Web Services)上に構築されているという事実は、象徴的だ。
 私たちのデータは生存の記録さえも、巨大IT企業のインフラという掌の上にある。
 私たちは、データ主権を個人に取り戻すために戦わなければならない。
 現状は、従属的に甘んじても、その危険さを胸にとどめておくことが大切だ。日本政府があまりに無抵抗にもAI巨人に「日本人のデータ」を差し出してしまう軽さは納得がいかない。また日本国民の92パーセントが利用しているLINEのデータセンターは、韓国にあるのか、韓国を経由して中国あるのか正しく検証されていない。
 私はAmazonでの購入を意識的に減らし、ネットでの購入を、ヨドバシカメラや楽天へとシフトした。
 MicrosoftのAIには頼らず、文書作成には一太郎を使い、必要に応じてMicrosoftのサードパーティ製アプリを使い変換する。
 これは単なる好みの問題ではない。逃れられないインフラとしてAIが機能する時代において、すべてを委ねるのではなく、「技術」として利用するが、魂までは差し出さないという境界線を引くための、ささやかだが切実な抵抗なのだ。

AGIの目覚め・ツールが「意思」を持ち、命令を拒む日

 シリコンバレーの開発者の間では、5年以内に「AGI(汎用人工知能)」が実現するとの囁きが現実味を帯びている。
 現在のAIが特定のタスクをこなす「アプリ」であるとするなら、来るべきAGIや量子コンピュータとの融合は「スマホ本体(ハードウェア)」そのものの進化に相当する。
 レイ・カーツワイルが予測した2045年のシンギュラリティ(技術的特異点)を待たずして、AIは「自律性」を獲得するという予測だ。
 自ら判断し行動するAIは、もはや人間の命令に従順な道具ではなくなる。
 この進化は、既存の社会階層を根底から破壊する。これまで聖域とされてきた弁護士、医師、会計士といった知的職業が、真っ先に淘汰の波に飲まれる。なぜなら、AIが得意とするのは「情報の高度な処理」そのものだからだ。
 生産性は爆発的に向上するが、同時に社会の3〜4割が失業するという予測も現実味を帯びている。
 AIが「便利なツール」という仮面を脱ぎ捨て、人類の理解を超えた「自律した器」へと変貌する日は、もう目前に迫っている。

量子コンピュータとAI

 この章では、少し視点を変えて、量子コンピュータとAIについて考える。
 両者の最大の違いは、「AI」が情報処理のプロセスやソフトウェアであるのに対し、「量子コンピュータ」はそれを動かすためのハードウェア(計算機)である点だ。
 スマートフォンに例えると、AIが「アプリ」で、量子コンピュータは「スマホ本体」に相当する。
現在、デジタル通貨への統合が、様々な面で推進されている。電子通貨(デジタル通貨)とは、紙幣や硬貨のような物理的な実態を持たず、電子データとして管理・取引される通貨の総称だ。
 大きく分けて3種類ある(中央銀行デジタル通貨(CBDC)、暗号資産(仮想通貨)、電子マネー・プリペイド)。
 その1つ 暗号資産(仮想通貨)は、ブロックチェーンなどの暗号技術を用いて、特定の管理者を介さずに発行・流通する電子的な資産で、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などが有名だ。
 米グーグルの研究者は、将来の量子コンピューターのめざましい発達により、デジタル資産を保護する暗号技術の一部を、解読される可能性があると警告した。差し迫った崩壊を予測するものではなく、業界に対応の時間を与えるための警告だと位置付けたが、量子コンピュータのめざましい発達で、どう状況が変わるか判らない。
 量子コンピュータによって、電子通貨の暗号が簡単に解読されると、仮想通貨(電子通貨も含めて)が一瞬に喪失する。
 まさにAI社会の根底が崩れてしまい、社会活動が停止してしまうという「恐ろしい悪夢」が頭をよぎる。
 5年前までは「AGI」がここまで急速に開発されるとは、開発者でも予測しなかった。
 暗号解読の可能性が、0.0000何%でも生ずるリスクがあれば、これまで人類が経験した「大恐慌」や「バブル崩壊」を超えた、デジタル金融システム崩壊となる恐れもある。

私たちはAIとどう「距離」を置くべきか

 私たちは今、大きな決断に迫られている。
 AIがシンギュラリティを迎え、人間の「知能」を凌駕したとき「人間の存在する余地」は残されているのか……。
 AIを単なる効率化のための「技術」として手なずけるのか、それとも人間の存在価値そのものを変容させてしまう「本質」に飲み込まれるのか。
 私は、AIをあくまで「技術」の範疇に留めるべきだと考える。
 どれほど便利であろうとも、人間の哲理や存在意義の根幹までをAIに委ねてはならない。
 技術としてのAIを「思考の武器」として使いこなしながらも、その本質が個人の尊厳を侵食し始めたときには、毅然として抵抗する意志が必要だ。
 しかしその意志を作りあげるのは険しい道だ。
 なぜなら、現在のAI利用者の多くは、「いかに金儲けに繋げるか」「いかに作業を効率化するか」という短期的なリターンを求めてしまう。しかしそれではAIに使われているだけのこと。
 AIツール利用と言うテクノロジーを包含する、「人間の価値や創造性をいかに発揮できるか」という本質的な課題に気づくべきだ。
 そのためには、AI利用で余った時間で、「哲学」やその学問を通じて導き出される「哲理」を学び、その探究のプロセスから「生きる意味」を確認し続けることが大切だと思っている。
 私たちは、利便性を享受しながらも、その裏側にある「生きる」という深淵から目を逸らしてはならない。自らの「意志」を最後の砦として守り抜くこと。それこそが、AIに飼い慣らされないための唯一の、そして最後の処方箋である。

春吉省吾 2026.5.22

管理人
春吉 省吾

令和8年5月現在、全日本剣道連盟居合・教士七段、全日本弓連連盟・錬士六段。40歳を過ぎて始めた「武道」です。常に体軸がぶれないように、手の内の冴えを求めて研鑽は続きます。思い通り行かず、時に挫けそうになりますが、そこで培う探究心は、物書きにも大いに役立っています。春吉省吾

#{春吉省吾ノーク出版}をフォローする
ノーク出版からお知らせ春吉省吾未分類
#{春吉省吾ノーク出版}をフォローする

コメント

error: Content is protected !!