夏の熾火(上・下セット)

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元の価格は ¥4,536 でした。現在の価格は ¥3,700 です。 (税込)

「弓道」を愛する日本中の方々にお読み頂きたい小説です。
置き去りにされてしまった美しい日本の叙情と英知、そして行動哲理。それら多くの大切なものが「夏の熾火(おきび)」の中にあります。読み終えた後、あなたの思考と意志は、確かに変わっているに違いない……。
 命の燦めきと重さを全ての方々に実感して欲しいのです。

日本の本格的「弓術」小説の嚆矢「冬の櫻」に続く、「弓術小説」の2作目です。この「夏の熾火」のテーマは、プロフェッショナルな能力を持つ人間達が、組織の中でどう生きたかという、まさに「人間行動学」が活写されています。

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説明

夏の熾火あらすじ

紀州藩士・弓術家 吉見台右衛門、その愛弟子の美しすぎる 若き弓術家 葛西薗右衛門。尾州竹林の名誉をかけて戦う 星野勘左衛門。貧困から脱するために、通し矢「大矢数」日本一を目指した 和佐大八郎。
天才達は、あらん限りの力を振り絞り「大矢数」に臨んだのです。そして、彼等を支え、真摯に生きたヒロイン達の一生。
熊野、和歌山、京都、江戸、美しい風景と伝統行事、万葉をはじめとする歌や謡曲など、自然と文化が物語の中で溶け合います。そして綾なす織布の如く、男と女の情が深まります。
「炎は熾火となり、それもやがて灰になる──」
「熾火」という言葉が、ヒロイン達の人生に関わって参ります。
どうぞ清々しい涙を流してください。

「夏の熾火」本文の会話から

小説は「会話」が命です。「夏の熾火」の主人公やヒロイン、主要な脇役の言葉を、抜粋してご紹介致します。物語の中の会話は、全体の流れの中で生きています。
「会話の背景」を想像してみてください。
そして、実際に「夏の熾火」をお読みになり、首肯し、微笑み、涙を浮かべてお読みください。

●「吉見……といったな。普段から冗談の通じない男と云われていないか」
 「はい、そういわれれば(伝説の弓師・茂蔵を訪ねた吉見台右衛門が、小森谷で初めて出会った時の会話。上P28)
●「紀州のおじさん、弓引きのお侍はん、気持ちがめげとりましたで。どうぞ来年もここに来はって、来年こそ必ず勝っておくれやす」(四回目の大矢数に破れた台右衛門に、三角屋の娘、夏美が声を掛ける。上P59)
●「いや、そなたでなければ駄目じゃ。これから腹を切る男が、風邪薬を所望し、部屋を暖かくせよとは何と浅ましい命乞いよと、儂の本心を知らぬものに思われるのも腹立たしい」(牧野兵庫が死に赴くとき、吉見に依頼した言葉。上P92)
●「左様、古来より神器としての弓。それは神代を継承して今ここにある。今回の大矢数は弓とあなた自身が見事に融け合っている。あなたの弓と身体が一体となって、矢に撓められ発射される。あなたが発する気は遠い無限の過去から、遙かな未来に至るその真ん中にある。(後略)」(五回目の大矢数で、伊藤仁斎が台右衛門にアドバイスした言葉の一部。上P137)
●「台右衛門様、弓は日本一でも、お酒は弱いのどすなあ」
 「夏美殿が強すぎるのじゃ」(三角屋で八千代大夫を交えた宴席で、台右衛門と夏美の会話。上P171)
●「今まで一度も、寝顔を見せたことがおまへんでしたが、最後に見られてしまいましたわ。出来ることならわてが貴方様の……」
 「絹、それ以上話すな。わかっておる、みんなわかっておる」(台右衛門の母絹の臨終に、父喜左衛門が答えた。上P247)
●「儒学も禅も多少囓りましたが、あまりに心気の論を重視し神秘的宗教的な領域に入ってしまうのは如何なものかと思っております」
 「う~ん。そなたは色々なことを承知の上で言っているのであろうな」(葛西薗右衛門と大和流祖・森川香山との会話。下P41)
●「何と……、それは其方の大矢数の参加も否定することになるぞ」
 「左様にございます。このまま我が紀州と尾州の際限なき争いをしても、不毛な結果になろうかと存じます」(藩主・光貞に面会した薗右衛門の会話。尾張の星野勘左衛門の記録を越えんと決意する、薗右衛門の心情が現れている。下P116)
●「いややわ、わてが遣り手婆さんみたいなことになってしもた」
 「そんなことはないぞ、お前は賢くて、逞しくて、きれいじゃ」(薗右衛門と経子が買い物をした時の会話。下P172)
●「母の匂いだ。経子、其方は母と同じ私の大好きな匂いがする……。伽羅は母の形見じゃ」
 「そうどすか、嬉しいおす」(薗右衛門が病の養生のため経子と一時暮らした、嵯峨嵐山での二人の会話。下P175)
●「ええっ、着古した下着の下に入れておくなど、撥が当たります。何を措いても、仏前にお供えしなければなりません」
 「そうか、金子か形のある記念品を貰えると思ったのだがな……」(親王様から頂いた短冊を前に、大八郎と千代の会話。下P261)
●「一度、御父上の膝の上に儂が抱かれて坐っていたとき、其方が大きな身体を小さくして畏まっていたことを記憶しておる。其方は覚えておるか」
 「いえ、一向に……」(藩主・吉宗と大八郎との咬み合わない会話。下P292)
●「どんな理由があれ、儂は新藩主(吉宗)を認めんぞ、このままでは、先に亡くなられた綱教様にも申し訳が立たぬ」
 「しかしな、兄者、もう少し事が収まるまで、おとなしくしていた方が良いぞ」(大八郎と弟半七との会話。下P333)●「私が亡くなったら、禰宜の和佐家累代の墓には葬らないで頂きたいのです」
 「な、なんですと」(千代改め豊とその息子、一右衛門との会話。下P405)

日本の本格的弓道小説

「弓道小説」というジャンルは、四季四部作の第一作、「冬の櫻」で、春吉省吾が創り出した新しいジャンルです。「冬の櫻」では圓城寺彦九郎という主人公を通して、その技と武の精神性を追求しました。
今回の「夏の熾火」は、藩という逼塞した組織の中で、一芸に秀でた三人の藩士達が主役です。
彼等が「弓術」と「政治」の間で、どう生きたかが描かれています。
両書併せてお読み頂くと、そのテーマの違いもお楽しみ頂けると思います。

管理人
norkpress

令和5年1月現在、全日本弓連連盟・錬士六段、全日本剣道連盟居合・錬士六段。40歳を過ぎて始めた「武道」です。常に体軸がぶれないように、手の内の冴えを求めて研鑽は続きます。思い通り行かず、時に挫けそうになりますが、そこで培う探究心は、物書きにも大いに役立っています。春吉省吾

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