曼珠沙華文化二年(1805年)、若年寄であった三池藩藩主立花種周(たねちか)は突然解任され蟄居謹慎を命ぜられ、翌年嫡子種善は、三百七十里離れた奥州下手渡に移封となった。その44年後、三代藩主立花種恭(たねゆき)は十四代将軍家茂のもと若年寄兼外国奉行に抜擢され、イギリス公使パークス、フランス公使ロッシュとも渡り合った。下手渡と九州三池の一部(筑後三池郡内に五千石)が所替えとなったが、遠隔の家臣達の意思疎通は困難を極めた。
十五代将軍慶喜の時、老中格、会計総裁となるも二ヶ月で罷免。戊辰戦争の際に、国許では奥羽越列藩同盟に参加するも、三池側の藩士の意向で藩論は新政府へ恭順となり、藩主である種恭も京都に入った。
この矛盾した行動で、下手渡陣屋(藩庁)は仙台藩に焼き討ちされた。

主人公は藩主立花種恭と、嘉永五年(1852年)以来、下手渡と三池を十数回往来した吉村春明の二人である。維新後、種恭は初代学習院の院長となった。長編歴史小説・四季四部作の四作目、最後の「秋」。
登場する人物は多岐に亘る。
立花種周、間宮林蔵、伊能忠敬。時代は下って、十四代将軍家茂、十五代将軍慶喜、小笠原長行、松本良順、新選組近藤勇、土方歳三、小栗忠順、勝海舟、伊藤博文など。
禁門の変に敗れた真木和泉、家臣の吉村春明、森泰、三池藩豪家の出で騎兵隊にも所属した塚本源吾。
下手渡国家老の屋山外記、適塾に通った南持など個性豊かな人物達が多数登場する。