「愛別離苦」初音の裏殿・第四巻 印刷・製本所に入稿

友人の菅野兄に「愛別離苦」初音の裏殿・第四巻(本文約600ページ)の「荒校正」をやっていただいたのは、令和8年の2月2日のことだった。「荒校正」と言っても、丹念にチェックして頂いたので、誤字・修正箇所は数百ヶ所に上った。「荒校正」を受け取って以来、修正箇所と、全体の表記の統一に十日ほど費やした。例えば、「相、わかった」と言う記載と「あい、判った」と、同じ表現だが、統一しなければならない。
これらは、本来作家がやる仕事ではなく、編集者・校閲者の仕事だ。例えば、新潮社などの大出版会社は、一人の売れっ子作家に多くのこの校閲係が関わって、作家が見落としたこと以上の作業をする。作家は書き殴って、後は校正・校閲者に任せれば、完璧な作品が出来上がる。彼らは日本一の校正・校閲者のプロ集団だ。
一般的に、時局物(じきょくもの)とは、その時々の時事問題、政治情勢、社会の動向を題材にした文学作品、ノンフィクションの作品を言うが、タイトルも売れるように、センセーショナルなタイトルを付けるのは、編集者の仕事だ。作者は出来上がったタイトルを見て「こんなタイトル?」ということも多いという。中身とタイトルが乖離しているのはそんな事にも起因している。
有名・売れっ子作家は、校正だけでなく、資料集め、作品内容にまで大手の新聞社の文芸部、大手出版社にどっぷりと依存しているので、自由な発想による作品が書けなくなってしまうという危惧もある。(もっとも、持ち込みテーマの方がかえって考えなくても良いという作家もいるだろうが……)古くは、吉川英治さんと朝日新聞、松本清張さんと三島由紀夫さんの新潮社、司馬遼太郎さんの産経新聞、朝日新聞などだ。
私の場合は、取材から資料集め、校正・校閲、冊子のレイアウトから装丁、入稿、電子書籍の作成、DM、栞、SNSへの告知、動画作成、HPへのネットショップの作成、アマゾンなどへの販売書籍のアップ、購入者への梱包発送業務など、全て一人で処理している。人を雇っては、経費倒れになってしまい、続編が続かないという「本音」もあるが、様々な作業をすることで「自由度」も保証されるし、後期高齢者になっても、惚けずに執筆作業ができるのは、多様な業務を独りでこなしているからだ。
居合も弓道も、ああでもないこうでもないと、本質に近づこうと、稽古を続けている。(武道の道は遠い)
食品の買い出しも、料理も、事務所の掃除も自分でやるし(洗濯は妻)、備品の調達や、消耗品はなどの購入もお手の物だ。社会の動きに誰よりも敏感だと思っている。
初音のシリーズには、池波正太郎さんよりももっと詳しい江戸期の旬の食材や、庶民の屋台の食べ物、市場の賑わいなどは勿論、調理法、料理の数々が記載されている。食べるだけでなく、実際に料理を作っている私の作品の強みの一つだと思う。
「愛別離苦」という物語

本シリーズの第三巻「深慮遠謀」のあとがきの一部には、こう書いた。
「(前略)旧態依然とした幕末歴史時代小説の歴史観を打破し、日本人が真に覚醒するためには、歴史上、イギリスのしたたかな日本覇権計画を探る必要がある。その水先案内人が主人公宇良守金吾である。
私は、歪められた薩長史観の狭量な物語や、坂本龍馬に代表される柔(やわ)な表層だけのロマンチスト物語を「歴史時代小説」とは呼ばない。金吾の持つ正確な歴史認識は日本再生のための智慧であり、全能全智を賭けて、愛する者や家臣、領民のために戦う姿は、日本の厳しくも明るい近未来の指針なのだ。(後略)」と。
今回、第四巻「愛別離苦」のあとがきの一部にもこう記載した。
「(前略)これまでの幕末歴史小説の全て(そう断言します)は、国内の政治的駆け引き、例えば、幕府と朝廷、大藩相互の思惑、尊皇攘夷などに蠢(うごめ)く人間模様に限定され、当時の日本が、世界の中でどういう立ち位置なのかという「大局を観る」観点に欠けていました。当時の日本人の指導者達は、イギリスなどの列強の日本侵略の真意を知る由もありません。
本来、歴史時代小説は、新しく確認された歴史認識に立ち、後世に伝えることも大切な事です。また主人公宇良守金吾を取りまく集団はフィクションですが、歴史の時系列をきっちり再現し、社会風俗、食生活、物価・流通などを忠実になぞらなければ、歴史時代小説とは言えません。
これらの基本概念を基に初音の裏殿シリーズは創られていますが、戦うべき相手が、「愛別離苦」で明確になりました。それは海外列強であり、固(こ)陋(ろう)な思考、因襲に捕らわれた国内政治集団です。これらをどう利用し、どう戦うか。
逆境で鍛えられ「鉄の精神(こころ)」を纏(まと)った金吾ですが、同時に、熱い愛を求める血潮が滾(たぎ)っています。金吾を慕う女性達も気になります。(後略)」
と言うわけで、初音の裏殿シリーズは、宇良守金吾のしっかりとした情報収集とその具体的な実行プロセスが、今流行りの「インテリジェンスintelligence」の先駆け、実践とが見事に重なる。
「インフォメーションinformation」とは、視覚情報、伝聞情報などを知覚する意味で使われているが、それに自らの知性をもとにした検討や熟慮を加えた「分析情報 intelligence」と言う言葉を最近多く目にするようになった。
まさに、初音の裏殿シリーズの主人公、宇良守金吾が、そのintelligenceを用い、具体的に自藩の領民と家臣、関連する協力集団の暮らしを豊かにしようとする物語だ。
日本人の多くが、楽しみながら、様々なエッセンス読み取っていただきたい。

歴史的・文化的立場を学ばず、哲学的思考の出来ない人間たちが、AI、AIと騒ぐことに危機感を覚えている。それはまさに「原子力村」に蝟集するエリートたちと同じ臭いがする。「AI村」という人・モノ・カネの利権構造が出来上がっているようだ。
今回、衆議院議員選挙結果で、もっとも「いやな感じ」がしたのは、高市首相率いる、自民党圧勝ではない。チームみらいとかいう、東大のIT松尾豊研究室の門下生たちが母体になってる新興政党の得票分布だ。(選挙期間中のオールドメディアの持ち上げ方や「テレビへの露出時間」は、気持ちが悪かった)いずれ、そのレベルの上の分析家がこの現象を証明してくれることを期待している。
本来のAIの未来に及ぼす脅威と、変化、希望などの根幹の問題を検証する前に、AI利権が先行しているのは世界現象。日本も世界も倫理観ゼロの世界が加速している。欺されてはいけない。
今こそ、ちっぽけな覇権主義を見抜き「自分で決めて、自分のことは自分で守り抜く」強い意志が求められる。それは、自己哲理を持たず、磨かず、無関心の方々は、いつの間にか「誰からやられたか、判らないまま」淘汰、抹殺されてしまう恐ろしい時代になっているということだ。真面目に生きているものが全く報われない社会などあって良いわけがない。それは「愛別離苦」の執筆にこめた、私自身の強い意志だ。

主人公・金吾の情愛

未読の方にとって、この初音の裏殿シリーズでもっとも知りたいのは、金吾を取りまく人間関係であろう。
私自身が、この長編歴史時代小説を敢えて、「シン幕末大河ドラマ」と位置づけたのは、人と人との出会い、対立、協調、別れなど様々な人間ドラマの中で、変わるものと、決して変わらぬものを、様々なシーンに織り込んでいるからだ。そして、未読の多くの方ににお読みいただきたいという思いは強い。
ここでは、金吾を取りまく女性たちを中心に、シリーズの登場人物を簡単にみていきたいと思う。
金吾の生母、明子(めいこ)は光格天皇と勧修寺婧子(かじゅうじただこ)(仁孝天皇の御生母)との間に生まれた双子の王女の一人である。関白鷹司政煕(たかつかさまさひろ)(鷹司政通の父)の策動で、宇良守家に出された明子は、金吾の父、省吾と結ばれ、金吾を産んだが、生後十日で世を去った。
乳飲み子の金吾を命がけで育てた、乳母玉枝。宮中の細かなしきたり(有職故実)、茶道、華道、書道、和歌、漢詩、物語(文学)などの一切を学んだ。玉枝の悲しくも切ない物語は第三巻「深慮遠謀」に記載されている。
金吾が初めて「男になった」のは、吉原三浦屋の、名跡「花紫太夫」であった。当時、花紫太夫の禿(かむろ)であった「みく」との関わりは、二巻、三巻、四巻と続く。身請けされたはずの花紫太夫の消息はどうなったか。
みくも十七歳になり、いろいろな経緯から、金吾が水揚げすることになった。(これは第五巻に続く)
そしてここまでのヒロインは、五年前に渡琉した金吾と結ばれた、琉球第二尚氏十七代王尚灝王(しょうこうおう)の十女・真麻刈金(ままかるがに)(日本名秋月)である。その、情熱的で切なく哀しい熱愛は、記述している私自身が、何度も涙をこぼしながら筆を進めたほどだ。
秋月とは僅か50日の夫婦であったが、金吾は男として夫として、最大の愛を注いだ。「必ず迎えに来る」という約束をした金吾は、藩の建て直しのために、五年間、全智を賭け興産に努め、秋月を日本に引き取るために頑張った。別れて一年後に秋月が身籠ったことも知った。新船「菊花丸」を仕立てて、琉球・那覇に向かう一行の団結と統率力もまた特筆される。
金吾と秋月の間に生まれた嫡男、憲吾を巡って、大藩、薩摩・島津斉彬(なりあきら)を主軸として、幕府老中首座、阿部正弘、徳川斉昭(なりあき)が早速動き出した。金吾は、三条実万(さねつむ)〈実美(さねとみ)の父〉の庶子・富子を娶ることを確約させられた。彼らは金吾の弱点を見逃さない。
権謀術数渦巻く、政治の世界に金吾はどう立ち向かうか。だがこれだけでは、大先輩の作家先生がお書きになった幕末時代小説と変わらない。「シン幕末大河ドラマ」と主張するからには、視野を世界に広げなければならない。そして金吾が、直截・間接に列強とその手先と対峙することになる。これは、現在日本が、日本国民が措かれている立場とも深く関わってくる。
長崎町年寄、久松本家の久松華子は、独特のキャラクターを持つ。
長崎町年寄久松善兵衛の娘イクと唐人の呉張世との間に、望まれずに生まれた華子である。不憫な孫、華子の境遇を思い、幼少から善兵衛唐語を習わせた。読書傾向も常人とは違う。何しろ頭でっかちの少女であった。しかし金吾と出会って大きく変貌した。
「愛別離苦」の巻で、華子の父が上海で生存している事を金吾は知った。しかし、華子はそれを知らない。呉張世は、清の中国平定に尽力した呉三桂の末裔と言われる。呉三桂は清朝設立に尽くしたが、後に清に背き、三藩の乱を引き起こし、周王朝(大周)を建国して皇帝を称した。
華子にもその血が混じっているとしたら……。
国元の餐夢館の奥を預かるギン。彼女の作る料理の腕は、誰もが認める。
宇良守藩目付・柔術指南の式部の妻志穂。藩医池田匡之の妻ツル。
京都屋敷の管理人平蔵の娘の島。亭主は老舗菓子商虎屋の職人である。
そして中老松浦鼎の妻、佐代。鬼鉄の妻で、はつるの宿の女将、早苗。鬼鉄一統の全国の情報を聞き込んで、一次情報をきちっと収拾する役割も自覚している。
様々なキャラクター持つ女性たちの活躍は、金吾の活躍に大いに役立っている。
まさに「シン幕末大河ドラマ」では、様々な人生を持つ人間たちの暮らしとその役割が活き活きと描かれている。
初音の裏殿シリーズ、全4巻特別販売キャンペーン

この初音の裏殿シリーズの既刊、全四巻をどうしても未読の方々にお読みいただこうと、大キャンペーンを計画している。
第一巻「怪物生成」、第二巻「破天荒解」、第三巻「深慮遠謀」、第四巻「愛別離苦」とそれぞれに独立して、お読みいただけるが、第一巻で仕込まれた「点」が、次々に結節して「線」になるという大ストーリーなのだ。それらは全て関連し収斂し大団円に向かうので、第一巻から読んで頂くのが妥当だ。
というわけで、第四巻「愛別離苦」発売(三月末)と同時に、4冊一括購入の特別キャンペーンを実施いたします。
是非、独りでも多くの方にお読みいただきたいという企画です。
原価を割った御提供です。今この時にお読みいただきたいという作者からの願いのキャンペーンです。
お陰様で、株式会社ノークは42周年、ノーク出版は創立8周年、併せて50周年です。4冊全て一括購入だと、消費税を含めて、13,900円になります。
「どうせ50キャンペーン」と言ったって、まさか4巻纏めて半額の6,985円にはならないだろう……。
そうお考えの方は、私の「意志」を全く理解していません。
やるときはもっと、もっと徹底的にやります。
発表まで暫くお待ちください。3月半ばに発表しますが、既に一巻~三巻まで、全てお求めになった方もいらっしゃいますが、弊社ショップからの購入者は全て把握していますので、第四巻「愛別離苦」(自社ショップからお求めになると消費税360円と送料は弊社で負担いたします)をお買い上げの価格で、第一巻・第二巻・第三巻を無料で御提供します。
まだお読みになっていない方に、プレゼントしてください。
「シン幕末大河ドラマ」を是非多くの方にお読みいただきたいという、私の本気度をご理解ください。
3月半ばに具体的に発表いたします。お楽しみに!!
読書から想像力を手に入れよう。春吉省吾の小説群は、それに応えることが出来ます。
2026年2月23日 春吉省吾

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