●ウォーキング中に見つけた季節外れの丸葉朝顔 10.25
●某地点から新宿を望む。櫻の葉が大分伸び、ビル群が隠れてしまった。10.25
●福島在住の親戚から頂いた、新米。10.26
〈本文〉
年齢に抗って、70歳から上梓した、幕末・維新大河小説「初音の裏殿」シリーズはそれぞれテーマ毎になっていて、途中からお読み頂いても良いです。しかし、第一巻からお読みになれば、主人公の成長と、幕末社会の変動と緊張が時系列にお楽しみ頂けます。
第一巻の「怪物生成」では、主人公宇良守金吾が、突然何者かに襲われるシーンから始まりますが、これは、第三巻以降の物語のシーンを「冒頭」に記載し、これから金吾の未来に立ちはだかる様々な困難を、まずは読者の皆様の脳裏に焼き付けて頂くためのものです。
第一巻の「怪物生成」では、その天才的知略と、天皇家の血筋を持つ18歳になるまでの金吾の異能の片鱗を読者に披瀝しました。金吾が「怪物」と称されたその経緯が綴られています。とんでもない物語が始まるという予感がするはずです。
今年9月末に発売した第二巻の「破天荒解」では、金吾が、宇良守藩の家臣と領民、そして宇良守家を取りまく様々な組織の者達を一つに纏め、相互の協力で強力な情報組織を作るその第一歩を踏み出す迄を記してあります。
琉球から、大量の上白糖や氷砂糖、高麗人参や薬種を購入し、大坂商人も驚くほどの戦略と緻密な戦術で全て売りさばきます。これは、現在の経営やマーケティングに応用できます。私の長い経営コンサルタントとしての経験から、中小・中堅企業の経営管理者の方々、これから起業する方々にとっては、MBAの経営書を読むよりも遙かに役立つと思っています。「人・モノ・金」、そして何よりも重要なのは、「情報」と、全体を指揮する指導者の人間性と、決断、勘働きなど、人を動かすあらゆる要素が書かれています。
ハウツウの経営書をお読みになるより、抽象論に終始する人生啓蒙書の類いの本をお読みになるよりも、この「初音の裏殿」シリーズをお読みになる方が、はるかに役立ちます。
さて、第一巻の「怪物生成」をお読み頂いたある読者のお一人から、「この小説はむずかしい」というご指摘がありました。
僭越ながら、はっきり申し上げます。「それは日本人の知的レベルが大きく劣化したからです」と申し上げます。
というのも、これまでの歴史時代小説、特に大河小説と言われるジャンルでは、戦後の高度成長期の時代に大いに貢献しました。日本国民の一人一人が、ある理想に向かって合理性を追求し、寡黙に働き努力すれば、社会的な貢献を果たし、日々の暮らしも良くなり、目標は達成出来ると信じた時代でした。日本人を鼓舞した歴史小説が流行りました。本来「英雄」とは呼べない人物まで、日本人のヒーローになりました。
良い時代でした。大衆小説や国民的作家といわれた方々が輩出した時代でした。
しかし今、経済活動のみに専念し、築きあげようとした「一億総中流意識」の時代は終わりました。バブル経済も弾け、プラザ合意以降、国際金融資本家達によって、日本人の蓄積した富は、海外に流出し、国民の実際の生活現場は、30年も成長せずにボロボロです。
そして、この3年近くにわたるコロナ禍によって、国民は恐怖におびえ、分断され、何をどのようにしたらいいか判らなくなってしまいました。日本国民はあまりに単純で無知でした。
これだけ真面目に働いて、あなたの中に何が残っていますか。〈金銭だけではありませんよ〉
何故こうなったのか判りますか。〈あらゆる情報が封鎖されています〉
そうならないようにあなたは何をしましたか。〈しっかり意志表示せずに、盲従だけでは悪政を許可したことになります〉
明治期以来、欧米から持ち込んだ「合理性」をひたすら追求し、多くの日本人は、本来持っていた「非合理性」を捨てようとしています。いや、捨てるように仕向けられて、それに従ったという方が的を射た表現でしょう。
非合理性とは、本来日本人が持っている文化や伝統のことです。四季豊かな日本列島で、先祖への感謝や、家族同胞と助け合い分け合い、自然を畏怖し、自然に感謝し、折々の行事を行った日本国民の特質です。実はこれを喪失すると大変なことになるのですが……。
私はその代表が「天皇」だと思っています。国民の見えないところで、国家安泰、国民の繁栄を祈る宮中祭祀の主宰者です。年間で20件近く行われますが、新嘗祭はその代表です。「祈り」が天皇の仕事なのです。日本国民の依(よ)り代(しろ)です。
この「非合理性」の大切さを本能的に判っていたのが、江戸時代迄の日本人でした。これがなくなってしまうと、日本国民はバラバラになってしまいます。
特に戦後、西欧の合理性を追求する思想と、天皇制に代表される非合理性は矛盾するので、このことに関して、その本質は表だって語られませんでした。
様々な民族が混じり合って、「日本人」を作りあげてきたと思いますが、この非合理の依り代「天皇制」があることによって、日本人の精神性は分裂せずにやってこれました。
「初音の裏殿」シリーズの、主人公の宇良守金吾は女系ですが、光格天皇の孫に設定した意味は非常に重く重要なのです。
保守思想の重鎮の一人、田中英道先生の著書「日本人を肯定する・近代保守の死」の中で、「司馬遼太郎の合理性と天皇」という章があります。その中で
「司馬遼太郎が書いた一連の日本に関する著作の中では、天皇が一切描かれていないということです。ここには明白な理由があるように思えます。天皇を書いてしまうと、合理性が一瞬にして消えてしまうからではないか。『合理性』という絶対根拠が消えてしまうことを恐れて描いていないのではないか、ということです」と記載があります。
田中先生の指摘は頷けます。
私がこの幕末維新・大河小説を書く動機は、従来の歴史小説とは「違った視座で、幕末・維新」を見直そうという意志のためです。
私は日本の精神性は、縄文時代から続く精神性が「天皇制」をも取り込み、仏教、儒教、道教、などが渾然となり、祭りや行事、更には習慣、文化としての芸術・文学を形づくったと考えています。
金吾が天皇の血筋を引くことから、伝統的な行事やそれに類する食べ物、万葉集や古今和歌集や源氏物語などが、物語の隠し味になっています。
また、江戸の経済書や朱子学、陽明学、蘭学や、法華経や禅、剣術奥義書など、従来の歴史時代小説では統合されなかった、様々な要素を噛み砕いて本文中の至る所にちりばめました。
前述した「この本は難しい」と思った読者の方は、かつてこの様な歴史小説をお読みにならなかったからです。事実、第二巻「破天荒解」をお読み頂いて、「面白かった。第三巻を楽しみにしています」というお返事を頂きました。
今から、源氏物語や万葉集、古今・新古今などを読むこともしんどいなという方のために、それらの要素を入れ込んだ、日本の大河小説とはこういうものだとご理解頂きたいのです。
例えば、幕末・維新に活動した、坂本龍馬が、西郷隆盛が、勝海舟が、あるいは下級公家の出の岩倉具視が、源氏物語の日本人の琴線に触れる物語=日本的精神性と、蘭学や万国公法などの西欧的合理性の深層を理解し、両者の本質的相異を「知覚」していたら、幕末は変わっていたはずです。
徳川家康が、源氏物語を熱心に読み聞いて、日本人の深層を理解していたことと、同時にヤン・ヨーステン(「耶楊子」八重洲の由来)やウイリアムアダムス(三浦按針)などの意見を採り込んで、スペインの合理性の中に潜む野望を見抜きました。
合理性に特化した世界の覇権国家の危険性を見抜いた家康は、一方で、人間の機微、男女の機微など、日本的文化の精神性をしっかりと咀嚼していました。彼は、狂信的な一向宗徒の家臣達に散々手を焼きましたからね。
家康のような合理と非合理の両者を備えた人物でなければ、日本ではゼネラル・マネージャーにはなれません。こういう指導者が増えない限り、日本再興(いや戦後、日本はいまだに米国の属国です)・日本独立はあり得ません。そして私は、現在の合理性を追求するだけのリーダー達が指導する「世界」は大きな挫折を迎えると確信しています。その時、本来持っていた日本人の特性を磨かない、薄っぺらな日本人だらけでは、立つ瀬がありません。日本独立はないのです。
私はこの「初音の裏殿」シリーズを、次世代のためにも書いています。
時代の表面をなぞるだけの歴史小説や、「希望と願望」の似非(えせ)ヒーローを作りあげても、それはこの先の日本国を深く毒してしまいます。
幕末・維新を舞台にした過去の歴史を書きながら、どのような未来を具体的に作りあげるか、そのためにはどのような「手段」によって新しい「歴史」を作っていくのかという意識で執筆しています。つまり、過去の歴史を書きながら、未来への手掛かりを探る手段として、「初音の裏殿シリーズ」を書いています。
21世紀の厳しい環境で生きる日本の子供達には、人間の尊厳そのものを教えなければなりません。しかし残念ながら、それらを著しく阻害している組織が厳然として存在しています。 それらの組織が、我々の自由を根底から奪おうとしていることもまた冷静に伝えなければなりません。しかし、伝え方を誤れば、日本はアメリカと同じように分断の憂き目をみます。多くの血も流れます。
聡明で、大局を判断できる感性を持ち、したたかで、決して挫けない、国民の権利を守る人物の養成を図らなければなりません。どのような手段をもって、我々の暮らしを守るのか。
もっとも大切なことは「拙速に勝たなくて良いのです。決して負けないことです」。
そのために、具体的な戦術をどのように展開するかも問われます。グランドデザインも必須ですし、そのための日本人の持つべき哲理を磨かなければなりません。これまで、そんなこと考えたこともないという方は、とにかく一から、勉強し直してください。近々プログも作っていきましょう。「心身哲理講座2023」(仮題)というものです。
理想を掲げても、人・モノ・金がなければ、戦えません。そしてそれは何時までに、どうすべきかということを、明示化して実践しなければなりません。
僭越ながら、70歳をすぎた私が超長編歴史時代小説を執筆しているのは、その手掛かりを、心ある日本国民と未来を担う方々に知ってもらうための努力です。大赤字でも必死で頑張っているのは、はっきりした私なりの使命感があって楽しんでいるからです。言ってみれば自分のためですね。
第二巻を書き終え、小休止する間もなく、第三巻を執筆しています。第三巻は、このブログではじめてご披露しますが、「愛別離苦」というタイトルに致しました。
金吾の事業計画は着々と進み、藩の財政は豊かになりますが、金吾に様々な苦難が押し寄せます。これでもかというぐらいにです……。七転八倒する金吾が描かれます。そして、金吾はどう立ち直っていくのか……。
「愛別離苦」では、金吾の20歳からその7年後、嘉永6年の6月3日、ペリーが浦賀に現れるまでを描く予定です。そして安政の時代に突入します。読者の方々には、知られていない幕府、朝廷の駆け引き、そして海外列強の圧力も、より広い世界史的視野で描きます。お楽しみに。
2022.10.31 春吉省吾
現在、ホームページを刷新中です。併せてセキュリティの強化も図っています。これも一人作業なので大変です。
刷新の理由は、情報の価値を知らない方に、高度の情報を提供しても意味がないと判ったからです。但、必要としている方は多いはずなのです。他のブログ、Twitter、YouTubに書かれていない情報を集め、統合・分析して提供する必要があると思っています。大手新聞社の有料ブログ記事よりは何倍も役に立ちます。また「心身経営学」未公開の講義録も、改訂編集してアップします。20数年前は斬新すぎて、理解されませんでしたが、時代がようやく追いかけてきたようです。
「省吾の時局随筆」「心身哲理講座・2023」「春吉省吾NetShop」「省吾会員YouTube」(仮題です)
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